R水素の将来性

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R水素とは

R水素(アールスイソ 再生可能水素)とは、持続可能な方法で水から取り出す水素のことです。英語ではRenewable Hydrogenと表記されます。

太陽光や風力水力などの再生可能エネルギーとの違いは、貯めておいて必要なときに必要な分だけ利用できるということです。

そのしくみは、まず、自然エネルギーによる余剰な電力で水を電気分解しておき、水素エネルギーとして貯蔵しておきます。この水素エネルギーを必要なときに電力に戻して使ったり、車や工場を動かす動力や熱源として使用したりすることが可能となります。

このほかに、光触媒で水から水素をとりだす方法やバイオマスからの水素生成、水を改質することによる効率的な水素の取り出し方など、現在さまざまな研究が行われています。

このR水素ですが、現在はこのR水素を生み出すために太陽光発電のコストが発生しているという課題も挙げられています。そこで本記事では、今後のR水素の将来性として、どう効率化できるかといった点にアプローチしたいと思います。

青森県おいらせ町の「おいらせ水素ステーション」での取り組み

2017年10月に「三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合」が、青森県おいらせ町に設置した「おいらせ水素ステーション」では、敷地内に出力30kWの太陽光パネルと同出力のリチウムイオン蓄電池を併設しており、太陽光の発電電力で水を電気分解して水素を製造することが可能となっています。設置した太陽光パネルの容量で、提供する水素のほぼすべてを製造できるという画期的な設備である。

この「おいらせ水素ステーション」は通常の水素ステーションとは異なり、水素ステーションのネックとなる、ソーラーパネルの問題に着目しました。この水素ステーションに隣接する、メガソーラー(大規模太陽光発電)では、東日本大震災の被害で使用できなくなったソーラーパネルをリユースしたり、リユースもできないソーラーパネルは、素材別に分別してそれぞれリサイクルされます。分別された、ガラス材は発泡剤を混ぜて焼成し、新たな素材に生まれ変わり、循環システムを壊すこともありません。

国際的な水素サプライチェーンの開発

低コスト化・効率化の方法として、国際的なサプライチェーンの確立が挙げられます。

経済産業省が平成31年3月に発表した、「水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~」によれば、「製造段階で二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)技術や再生可能エネルギーを活用することで、トータルでも脱炭素化したエネルギー源とすることが可能である上、利用段階では水素から高効率に電気・熱を取り出す燃料電池技術と組み合わせることで、運輸、電力のみならず、産業利用や熱利用、様々な領域での低炭素化が可能となる。こうした水素を日常の生活や産業活動で大量に利活用する社会を実現していくため、水素を再生可能エネルギーと並ぶ新たなエネルギーの選択肢とすべく、環境価値を含め水素の調達・供給コストを従来エネルギーと遜色のない水準まで低減させていくことが不可欠である。」としています。

具体的な方策としては、海外に豊富に存在する低コストな未利用化石燃料資源を水素製造とCCSの組み合わせにより、CO2フリーのエネルギーとして活用するとしています。低コストな水素供給の実現に向けて、水素の製造から貯蔵・輸送、利用まで一気通貫した国際水素サプライチェーン構築実証が進められており、2020年に世界初の実証運転を開始する見通しとのことです。日豪間で進められているプロジェクトにおいては、安価な未利用エネルギーである褐炭からの水素製造(ガス化技術)、液化水素の状態での海上輸送、荷役・貯蔵技術について実証を通じて基盤技術の確立を目指して研究が進められています。また、日ブルネイ間で進められているプロジェクトにおいては、水素の有機ハイドライド化や脱水素化技術について実証を通じて基盤技術の確立を目指し、アンモニアによる水素輸送についても検討されています。加えて、水素基本戦略では、CO2フリー水素を用いたメタネーションの検討、パイプラインによる国内輸送についても言及されています。

このような、国際的な水素サプライチェーンの実現のためには、上流側の取り組みとして、再生可能エネルギーからの水素製造も含めた安価で安定的な海外エネルギー資源の権益確保に向けた取り組みやCO2分離・回収、貯留のコスト低減に向けた研究開発についても、計画的に実施していく必要があるとしています。またその一方で化石燃料を一切使わずに水と添加物だけで水素を発生させる技術の実用化にも期待が寄せられています。

【参考URL】

Honda 環境ニュース「Hot!Eyes」

青森県おいらせ町に本州最北のスマート水素ステーションが完成。

地熱活用やソーラーパネルの再利用などで省エネ・省資源な水素エネルギー活用を実現。

https://www.honda.co.jp/environment/hoteyes/hoteyes183.html

三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合(水素ステーション事業)

水素・燃料電池戦略ロードマップ – 経済産業省

https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001/20190312001-1.pdf

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