R水素は地域循環型の新しいエネルギーとして注目されています。しかし、R水素とは何か、どのような仕組みで活用できるのか疑問に思われている人もいらっしゃるでしょう。この記事ではR水素の基礎知識やメリットを解説し、実際の実用事例と今後の課題について紹介します。
R水素の基本知識
R水素は、再生可能という意味の「Renewable」と水素「Hydrogen」を組み合わせた「Renewable Hydrogen」と呼ばれる持続可能なエネルギーです。水の中にある水素を再生可能エネルギーを活用した電気分解で取り出し、取り出した水素を燃やしてエネルギーに変えます。この一連のプロセスではCO2を排出しないので空気を汚しません。
ここでいうRenewable(再生可能エネルギー)とは太陽光・風力・地熱・小水力・温泉熱・波力などを利用して生み出すエネルギーのことで、その中でもR水素には、24時間連続発電可能で夜中に余った電力を活用できる地熱・小水力・温泉熱・波力が適しています。
基本的なR水素サイクルを解説します。まず、再生可能エネルギーを自分たちの土地で使用します。そして余った電気を活用して水を電気分解して水素と酸素に分けます。水素ガスは気体または液体の状態でタンクに貯えて、必要な時に使用できます。
電気を生み出したい時、燃料電池に水素を入れると空気中の酸素と反応します。そして電気と熱、水を発生させます。このサイクルがR水素から電気を生み出す仕組みです。
R水素を活用するメリット
空気や水を汚さない・有害ガスを発生しない
R水素は水・酸素・水素が循環する仕組みなので有害ガスを発生しません。そのため、私たち生物に必要な空気や水を汚さないことが大きなメリットです。また、再生可能エネルギーも太陽や地熱など自然に存在するエネルギーを活用するため、自然環境にも優しいです。
災害時のバックアップ電力として使用できる
従来のバッテリーは時間が経つとエネルギーが減ってしまいますが、水素は劣化しないためタンクに長期間貯められます。そして災害時など電力供給が停止した場合に、非常用電力としてR水素を活用できます。
地域活性化に繋がる
地域で生み出した再生可能エネルギーを活用してR水素から電力を生みだすことで、自分たちの地域のみで電力が自己供給できるようになり、地域の自立が促進されます。また電力発電に関わるお金も地域の中で循環するので、地域活性化に繋がります。
原発・化石燃料・巨大送電線が必要なくなる
R水素は地域の再生可能エネルギーを活用して作り出し大量に貯蔵も行えるので、従来のように遠くから化石燃料を運ぶ必要がなく、原子力発電所で発電した電気を運ぶ巨大な送電線も必要ありません。
貧困が問題の地域にも電気が供給できる
未だ世界中には電気のない生活を送っている人が多いですが、R水素と再生可能エネルギーによって地域で発電すれば貧困が問題となっている地域にも電気が供給できます。
R水素の実用事例
ごみ焼却施設の余熱を利用
さいたま市では、ごみ焼却の際の余熱を利用した廃棄物発電によって電力を生み出し水素を製造しています。製造した水素は地域の民間企業が開発した水素ステーションで利用され燃料電池車に供給しています。
このスマート水素ステーションはコンパクトさが特徴で、パッケージ化してコンパクトにすることによって設置面積を削減できます。パッケージ化によって従来は10m×20mだった水素ステーションが3m×2.5mに縮小できました。
今後は廃棄物発電だけでなく、太陽光・風力・水力・バイオマスなどの再生可能エネルギーを利用した水素の供給も期待されています。
小水力発電を利用した水素サプライチェーン
北海道白糠町の「庶路ダム」には小水力発電所が設置されており、小水力によって生み出した電力から水素を製造する事業が行われています。製造された水素は地域内の温水プールや酪農施設などで利用されます。
小水力を利用して水素を製造する事業は国内初となり、北海道の地域特性に適した水素活用モデルとして今後が期待されています。
問題点・課題
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所「2018年の国内の自然エネルギー電力の割合」によると、日本国内の自然エネルギー(再生可能エネルギー)の割合は17.4%であり、太陽光・風力・バイオマス発電による発電量は前年度よりも増加しているものの、水力・地熱発電は横ばい状態です。
その原因の一つは発電コストの高さで、例えば非住宅用の太陽光発電システムの費用では、日本は欧州に比べて倍近いコストがかかっています。しかし、日本においても再生可能エネルギーの発電コストの低減化も進んでいるため、今後は再生可能エネルギーの普及も見込めます。
また、再生可能エネルギーが生み出した電気で水素を製造し、水素を利用して電気を作るプロセスではエネルギーロスは免れません。今後はエネルギーロスをいかに削減してくかが大きな課題となってくるでしょう。
R水素と再生可能エネルギーのその先にある未来
再生可能エネルギーから水素を発生させるのも良いが、発電コスト・低シェア率など課題はまだまだ山積みです。もっとシンプルに水と添加剤から水素が製造できれば地域や発電設備に依存しない、かつCO2を排出しない発電が可能になります。
たかはしエネルギー研究所が研究・開発した水素発生装置・燃料電池のソリューションで未来の新しいR水素モデルが確立できます。
詳しくはたかはしエネルギー研究所のWebサイトをご覧ください。
https://www.takahashi-energy.jp/
参考資料
さいたま市東部環境センター「スマート水素ステーション」
https://www.city.saitama.jp/001/009/004/002/003/shs_d/fil/leaflet.pdf
環境省「小水力由来の再エネ水素導入拡大と北海道の地域特性に適した水素活用モデルの構築実証」
https://www.env.go.jp/press/105529.html
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所「2018年の国内の自然エネルギー電力の割合」
https://www.isep.or.jp/archives/library/11784
経済産業省資源エネルギー庁「再エネのコストを考える」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienecost.html